平成27年11月30日

神奈川県知事 黒岩 祐治 殿

28 度 県の予算・施策に関する提言

 平成28年度県予算の編成にあたり、わが党の提言を提示するので、この実現を図るよう強く要望する。

自由民主党神奈川県支部連合会
幹事長  竹内 英明
政務調査会長  桐生 秀昭
自由民主党神奈川県議会議員団
団長  梅沢 裕之
政務調査会長  嶋村 ただし

目次

1.はじめに

2. 県民の視点に立った施策展開を

3. 県民にさらなる安全・安心を

4. 県民生活の充実に向けて

5. 都市農業の振興と環境対策の推進を

6. 安心できる医療・福祉施策の充実を

7. 経済のエンジンを回し、県内経済の活性化を

8. 災害に強い活力ある県土づくりを目指して

9. 将来を担う子供たちのための教育を

1. はじめに

イングランドで開催されたラグビーワールドカップ2015で日本は3勝した。決勝トーナメントへは進出できなかったが、南アフリカ戦から得た勝利は世界中でビッグ・ニュースとして報道された。日本のラグビーがレベルアップしたことを国際的に強く印象づけた。次回、日本で開催されるラグビーワールドカップ2019を大いに期待したい。
さらに、2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される。
国際的なビッグ・イベントを視野に入れ、政府は訪日観光客数2千万人を目標に掲げて政策立案を図っている。羽田空港へのアクセス強化をはじめ首都圏交通網の利便性アップや東京圏国家戦略特別区域における取組など、明るい展望が開けてきた。
一方、世界経済へ目を向けると、中国は減速傾向にあり、欧州や新興国においても予断は許されず、右肩上がり一方の経済成長は期待できない。
経済の下振れ懸念は尽きないが、本県は「経済のエンジンを回す」政策を着々と推し進めていくべきである。とりわけ、さがみロボット産業特区では、日本が誇る先端技術を結集させるべく全国へ情報を発信し、ロボット開発に向けて積極的に取組むことが肝要である。
さて、県は過日、来年度予算編成にあたり、概ね650億円の財源不足を見込んだ。歳出面では、人件費の割合が依然として高い水準にある上、急速な高齢化に伴い介護・医療費など義務的経費が増加している。徹底した歳出の抑制に取組む中にあるが、県民の生命にかかる施策については着実に進めていくことを強く求める。
近年、大雨、台風、水害……、異常気象による大規模な自然災害が目立つ。さらに、地震や噴火。大自然は人智を超える。自然災害をゼロにすることは不可能だが、減災は可能である。
わが県議団は、県内市町村並びに多くの県民や団体の皆様の声を聴き、その中から重要課題を本提言書として取りまとめた。今後、さまざまな議論の場を通じて具体的に提言していくが、本書の内容について的確に応えるよう要望する。

2. 県民の視点に立った施策展開を

(政策局、ヘルスケア・ニューフロンティア推進局、総務局)

1、日米関係機関の情報共有について
2、政府関係機関の地方移転について
3、県西地域活性化プロジェクトの推進について
4、ヘルスケア・ニューフロンティア政策の推進について
5、人口減少対策について
6、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会について
7、ラグビーワールドカップ2019について

項目1 日米関係機関の情報共有

本県には12箇所、約1,745haにも及ぶ米軍基地が所在し、その多くが人口の密集する市街地に位置している。
今後、米軍基地内で事故が起こることがあれば、多くの住民にとって危険があり、深刻な事態が生じる恐れもある。基地周辺住民の安全確保に万全を期するため、日米両国の関係機関における情報共有について協議するよう、日米両国に働きかけることを要望する。

項目2 政府関係機関の地方移転

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づき地方創生に資すると考えられる政府機関の地方移転に係る提案募集を行った結果、本県に所在する8つの試験研究機関等について24府県から移転の提案が寄せられた。本県に所在する8機関は、本県や地元市がその誘致に尽力するなど、ライフサイエンス、ロボット、エネルギーなどの分野における本県の重要施策と密接な関係を有する機関や、立地以来、年数を重ねて、まちづくりの賑わいの創出や産業振興に不可欠であり、今では地域になくてはならない存在となっている。
一方的に地方移転させるのであれば、本県に大きな支障が生じるとともに、本県に立地することにより様々なメリットが得られていた当該機関にとっては大きな損失である。本県に所在する8政府機関の地方移転を行わないよう強く要望することを要望する。

項目3 県西地域活性化プロジェクトの推進

県西地域の活性化は、県としても積極的に取り組むべき重要課題である。県西地域に特化した交付金制度が実施され、また「未病いやしの里センター」が具体化するなど、プロジェクト2年目の取組が進められている。
県は単に交付金を出すだけでなく、事業実施が円滑に進むようサポートするなど県が主体性をもって取り組むことが必要である。住民や訪れる方々への周知・啓発促進のため県西地域が「未病の戦略的エリア」として、世界に発信できるよう積極的に取り組むことを要望する。
項目4 ヘルスケア・ニューフロンティア政策の推進
健康寿命の延伸と新たな産業の創出を目指すヘルスケア・ニューフロンティア政策を県は積極的に推進している。誰もが健康で長生きできる社会を目指すための先進的な取組であるが、県民に十分、浸透しているとは言い難い状況にある。
県は「未病サミット神奈川2015 in 箱根」を開催したほか、庁内組織を充実させる方向で取組を加速化しているが、政策の実効性をあげていくためには県民の理解・協力が不可欠である。
今後は、県民の行動変容を促し、県民益の増大につながるよう取組むことを要望する。

項目5 人口減少対策

大都市圏にありながら、本県でも1市7町1村において人口減少が進んでいる。県内自治体の機能維持及び人口減少を緩和するための方策を県として講じるとともに、国に対して人口減少の著しい市町村への移住促進策等、人口減少対策を講じるよう求めていくことを要望する。

項目6 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会

東京2020オリンピック・セーリング競技が江の島で開催されることが決定した。県は、藤沢市をはじめとする周辺市町との役割分担を明確にし、責任ある協力体制を早く確立する必要がある。特に会場周辺の移動環境整備にあたっては、選手の移動や観戦者等に対するバリアフリーの観点から、県市間での協議の場をしっかりと設け、効果的な実現を図ることを要望する。
また、地元住民、地元商店街、地元漁業協同組合や湘南港利用者の協力と理解は必須である。様々な意見を聴きながら、過度な負担をかけずに要望事項を具体化するよう配慮を要望する。
更に、各競技種目の事前キャンプ誘致についても、県民の関心は確実に高まっている。県内の各地域にとって、キャンプ誘致は経済効果、知名度アップなどブランド力の確立にもつながる。地方創生、活性化という観点からも、都市部に偏ることなく、市町村同士の組み合わせ策なども含め、バランスを十分に考慮しながら調整、支援することを要望する。

項目7 ラグビーワールドカップ2019

夏季オリンピック及びサッカーW杯と並んで世界の3大スポーツイベントとされるラグビーワールドカップの決勝戦が横浜で行われることは、世界に向けて本県の知名度を高めることにつながる。地域経済にも大きなプラス要素になると期待する。
また、ラグビー日本代表の合宿地として正式に決まった小田原ではラグビー熱が高まりつつある。県内各地でのラグビームードの高揚をめざし、息の長い取組が大切と考える。
2019年の本番に向けて、共同開催自治体である横浜市と連携し、しっかりと開催準備に取り組むことを要望する。

3. 県民にさらなる安全・安心を

(安全防災局、 警察本部)

1、大規模自然災害対策の強化について
2、火山対策について
3、災害時の情報受伝達体制の強化について
4、石油コンビナート地震防災対策について
5、振り込め詐欺対策について
6、安全・安心まちづくりの推進について
7、早期の警察署建替えについて

項目1 大規模自然災害対策の強化

近年、異常気象の影響により降雨規模が大きくなる傾向にある。今後、さらに土砂災害の頻度の増加や、河川の氾濫などの水害等の規模が大きくなることが想定される。気候変動等を踏まえた県土監視・維持管理等の強化、警戒避難体制の強化、市町村等への支援の強化を図ることを要望する。
また、東日本大震災による地殻変動で地盤の移動が明らかになる中、首都直下地震や南海トラフの巨大地震等を危惧する声がある。県としても実効性ある地震防災対策を図り、支援体制の拡充や津波対策の強化を図ることを要望する。
自然の猛威を前に、減災へ向けた取組は県の責務である。最新の情報を元に各種対策を見直し、大規模自然災害対策を強化していくことを要望する。

項目2 火山対策

本県にも多くの観光客、登山客が訪れる活火山の箱根山がある。今回、箱根山(大涌谷)の火山活動の活性化に伴い、町民生活や観光産業に深刻な影響を与えている。火山と共生する本県としては、県民、観光客の安全安心の確保に向けて避難訓練を重ねて行うとともに、噴石防止のためのシェルター整備、観測・監視体制の強化と、外国人向けの対応として、避難情報を多言語化するなどの対策を要望する。
また、幹線道路等での火山灰などの除去作業のために欠かすことのできない重機やロードスイーパーを整備するよう要望する。

項目3 災害時の情報受伝達体制の強化

近年、大型台風や想像を超える集中豪雨による被害が増え、日本全域で生命、財産を奪う激甚災害が起こっている。
災害から県民の生命や財産を守るためには、災害に関する情報を迅速に入手し、速やかに避難などの対応をとる必要がある。Lアラートをはじめとする、県の災害情報受伝達の基幹となるきめ細やかな防災行政通信網や災害情報管理システム整備を要望する。

項目4 石油コンビナート地震防災対策

本県には、わが国有数の石油コンビナートが立地している。また羽田空港、首都高速道路、そして首都圏の人口密集地域にも隣接しており、その防災対策は極めて重要である。県としても「石油コンビナート等防災計画」の見直し作業などを通じて、長期的な視点から石油コンビナートの防災体制を高めるよう取組むことを要望する。

項目5 振り込め詐欺対策

振り込め詐欺の被害が大きく増加している。被害者の多くは高齢者であり、その手口は組織的かつ巧妙で、蓄えてきた財産を容易に奪われてしまうなど被害は深刻な状況にある。
緊急検挙対策プロジェクトを通して犯行グループの検挙を含む諸対策を一層、強力に推進するとともに、県民に向けても積極的な広報・啓発活動を行い被害防止に努め、県民の貴重な財産を守るよう要望する。

項目6 安全・安心まちづくりの推進

防犯カメラによる記録映像が犯人逮捕につながった事例は多く、犯罪の抑止効果も高いことから、県民からも防犯カメラの設置を求める声は大きい。また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催といった情勢を踏まえると、防犯カメラの整備拡充は急務である。
安全・安心まちづくりのため官民が連携して強力に取組み、通学路、公園、繁華街、民間事業所並びに交差点等の信号機への設置を促進するとともに、誘拐など凶悪犯罪が発生しやすい人通りの少ない場所へ設置する必要がある。民間の防犯カメラの設置を促進する補助金などの支援を充実するとともに、県警察が設置する防犯カメラも更に整備拡充を図るよう要望する。
また、安全なまちづくりのために、交通事故から県民を守ることも重要である。特に、信号機や道路標識、道路標示などの交通安全施設は更新が滞り、耐用年数を超え、目に見えて老朽化が進んでいる現状にある。県民の生命を守るため、適切に早く補修・更新すべきである。他県と比較しても、維持管理のための本県予算は決して十分とはいえない状況である。多額の費用が必要な場合には、計画的に順次、補修・更新していくことを強く要望する。

項目7 早期の警察署建替え

県内54警察署のうち、約24%にあたる13警察署が未だに耐震化されていない。さらに耐震性の問題だけでなく、津波被害も想定され、喫緊に建替えや移転等を考えなければならない警察署がある。
国土強靭化地域計画ガイドラインの中でも「警察の被災等による救助・救急活動等の絶対的不足」は起きてはならない最悪の事態として位置づけられている。
警察力による安全安心の確保への県民の期待は大きい。安全安心に暮らせる地域社会の実現のため、応急活動拠点である警察署の整備を早急に図るよう要望する。

4. 県民生活の充実に向けて

(県民局、 企業庁)

1、私立学校に対する補助について
2、子育て支援策の充実について
3、児童虐待防止対策について
4、子どもの貧困対策について
5、女性の活躍と自立支援について
6、ベトナムなど東南アジアに重点をおいた国際交流について
7、漏水対策とともに安定した水道事業の経営について

項目1 私立学校に対する補助

神奈川県は私学発祥の地であり、各学校は独自の伝統と校風を守り、本県教育の充実・発展に貢献している。
少子化社会の影響から生徒の減少傾向が懸念される中、高い教育水準を維持し、経営の健全性を確保するとともに、保護者の経済的負担を軽減するためには私立学校の学費補助は重要である。県民の理解を得られる学費補助となるよう制度の見直しを要望する。

項目2 子育て支援策の充実

子育て、あるいは出産を巡る不安や厳しい現実などもあり、本県の県別合計特殊出生率は1.31(平成25年)と全国に比べ、かなり低い。希望出生率を現実のものとすることが、明るい次世代を築くため欠くことのできない課題である。
国は「一億総活躍社会づくり」の実現に向けて「夢を紡ぐ子育て支援」を掲げ1,000億円規模の新たな子育て支援パッケージを打ち出した。
これを機に、県は安心して出産、子育てができる社会を構築するため子育て支援策の充実を図ることを要望する。

項目3 児童虐待防止対策

児童虐待に関する相談件数は増加の一途であり、児童の死亡事件など深刻な虐待が減る気配はない。虐待は、単なる偶発的・単発的家庭問題で生じるのではない。経済的貧困、家庭の文化的貧困や親の人格的貧困など、さまざまな問題が複合的に絡み合い、相乗的に作用したときに深刻な事件となって発覚する。虐待を受けている子どもを取り巻く環境がきわめて複雑であることを踏まえ、きめ細かな対応が必要である。
増え続ける児童虐待相談に対応できるよう、十分な体制を確保し児童相談所の機能強化を図るよう要望する。また、市町村の要保護児童対策地域協議会をはじめとする関係機関との連携も重要である。地域社会が一丸となり、死亡事件など深刻な事案が起きないよう施策の充実を要望する。

項目4 子どもの貧困対策

本年3月に策定した「神奈川県子どもの貧困対策推進計画」は、19の指標に基づき、施策の実施状況や効果等を検証し、必要に応じて事業を見直すとしている。
子どもの貧困は、特にひとり親家庭において貧困率が5割を超えるなど生活困窮の懸念が高いことから、県では本年8月、ひとり親家庭の多くが受給している児童扶養手当の受給者を対象にアンケート調査を実施した。
子どもの貧困対策は教育や福祉など多岐にわたることから、アンケート調査の結果も踏まえて、全庁的な取組を進めていくことを要望する。

項目5 女性の活躍と自立支援

人口減少社会を迎える中で、わが国の持続的成長を実現し、社会の活力を維持していくために、女性の活躍がこれまで以上に必要とされる。県として、女性の活躍応援のムーブメントを社会全体に広げていくことを要望する。
また、貧困や性被害など困難を抱え、支援を必要とする女性が後を絶たず、女性保護事業の果たす役割はますます重要になっている。女性を人権侵害から守り、自立に向けて適切な支援を行えるよう、根拠法の改正を視野に入れ、国に対し、財源措置や職員の配置基準の充実などについて働きかけを継続するとともに、県としても女性の自立支援に向けて取り組むことを要望する。

項目6 ベトナムなど東南アジアに重点をおいた国際交流

本県では世界の各地域と県民全体の様々な交流を進めるとともに、相互の経済発展や観光振興など地域の発展を促す交流や東南アジアの社会開発を地域から支援するため、多様な分野で国際協力を推進しているところである。
特に、ベトナム社会主義共和国については、本県が技術支援・人的交流のニーズの高さ、国際貢献の可能性を強く感じる。また、ベトナム社会主義共和国と経済友好提携に関する覚書を締結したところでもある。
今後、ベトナムとの連携に比重を置き、新たなネットワークの構築を進めていくことを要望する。

項目7 漏水対策とともに安定した水道事業の経営

県営水道事業は、現在、12市6町、280万人のライフラインとして、安全で安心な水の安定的な供給を実現しているが、節水意識の浸透等による水需要の低下や水道施設の老朽化、東日本大震災を踏まえた災害対策への対応など、経営環境の変化に的確に対応するため、神奈川県県営水道事業経営計画の着実な推進を要望する。
また、地方公営企業会計基準の見直しに伴い、県民に対し、経営状況のわかりやすい説明に努めるなど、企業経営の透明性を確保することを要望する。
さらに、ひとたび漏水事故が起これば、県民生活ばかりでなく、社会経済活動にも大きな影響を及ぼす。また東日本大震災以降、県営水道の漏水率が上昇傾向にあり、漏水率の低減は非常に重要である。水道事業者の責務として、調査や漏水防止対策を積極的に推進していくことを要望する。

5. 都市農業の振興と環境対策の推進を

(環境農政局)

1、都市農業の振興について
2、農地活用と担い手の育成及び6次産業化の推進について
3、鳥獣被害対策について
4、園芸振興と畜産業振興について
5、水産振興及び漁港・水産物卸売市場と周辺整備を含めた環境整備について
6、環境保全・創造の推進について

項目1 都市農業の振興

本県農業の特色は大消費地の身近で営まれる都市農業で、生産規模は小さいが、高度な技術による高い生産性が維持されている。より一層都市農業を活性化するためには、マーケット・イン型農業による生産販売やICTなどを活用したスマート農業等の推進により生産振興や労働力の省力化を図ることが重要と考える。
今後、多様な業種との連携を強化し、さらなる都市農業の振興を要望する。また、都市農業の課題である税制について、国へ強く求めていくことを要望する。

項目2 農地活用と担い手の支援育成及び6次産業化の推進

農地中間管理事業は、本県のような都市農業地域では運営に難しさがある。しかし、本県農業にとっても、担い手の育成確保や農地の有効利用を進めていくことは重要な課題である。今後、市町村等との連携や農業アカデミーの事業を強化し、新たな担い手や新規就農者の間口を広げながら農業の推進を図るよう要望する。
また、6次産業化の取組は、本県の農業経営の安定化を図るために期待される事業である。本県の農業者の実情は小規模経営が多い。そこで、小規模経営者をネットワーク化し、安定した商品提供や販売ルートの多様化を図ることが大切である。農産物の加工施設や設備投資なども必要であるが、経営規模や内容に応じて無理のない推進を図ることも重要である。神奈川農業の特徴を活かした6次産業化への取組を一層、推進するよう要望する。

項目3 鳥獣被害対策

依然として、丹沢大山地域をはじめ、県西、県北地域において、シカ、サル、イノシシなどが田畑へ出没するなど、農作物被害が深刻である。特にサルによる被害は重篤化の傾向にあり、効果的な対策を講じるよう要望する。アライグマについては、生息密度は低下傾向が見られた一方で、分布は拡大している。これまでは住宅や農地が中心であったが、今後は緑地での捕獲推進も重要である。
またツキノワグマ対策については、これまで同様、人命に危険が及ぶことのないよう地元市町村と十分な連携を図り、対策を強化するように要望する。

項目4 園芸振興と畜産業振興

園芸振興は生産者のみならず、県民生活にとっても重要であり、県園芸協会の果たす役割は大きいものがある。厳しい県の財政状況の中にあっても、協会の経営状況の改善を含め本県の園芸振興に支障をきたさないよう協会と十分に協議し、適切な支援と助言を要望する。
また、環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋合意に至り、県内の畜産農家への影響を懸念する。今後、本県畜産業の振興のためにも飼育方法やエサの研究など、生産者の声をしっかりと受け止めていくことを要望する。
さらに都市農業では、家畜により発生する、ふん尿処理や臭気問題は大きな課題であり、臭気の低減は脱臭技術の開発とともに、施設整備への積極的な支援が必要である。あわせて、畜産技術センターの組織強化や畜産技術職員の確保についても要望する。

項目5 水産振興及び漁港・水産物卸売市場と周辺整備を含めた環境整備

本県は内湾性の東京湾、外洋に面した相模湾を擁し、また内水面漁業もあり、さまざまな漁業が行われている。しかし、漁業を取り巻く環境は水産資源の減少、魚価の低迷や燃油価格の高騰などの影響により、依然、厳しい状況にある。
本県漁業の特色を活かした水産業の振興を図るため、水産資源の管理や回復のための技術開発や経営基盤の安定強化のための支援等の充実を要望する。特に、現在取り組んでいる小田原漁港特定漁港漁場整備事業や三崎漁港の高度衛生管理は本県水産振興を大きく左右する事業であり、積極的に推進することを要望する。
また、県内外から観光を兼ねた集客を図るため、漁港・水産物卸売市場と周辺整備を含めた多目的化の推進等環境整備の推進を要望する。

項目6 環境保全・創造の推進

来年3月に新たな環境基本計画が予定されている。
水源環境の保全・再生対策事業は、県民税の超過課税いわゆる水源環境保全税を財源としている。県民からの貴重な税金であり、より一層の水源環境の保全・再生に努めていくことが大切である。
県西地域では、スコリアが崩壊するなど森林に被害が出ているとともに、県北地域では、ダム湖の湖岸崩落が顕著になってきている。土砂災害の頻発化なども危惧されており、土壌保全等の対策を要望する。

6. 安心できる医療・福祉施策の充実を

(保健福祉局)

1、地域医療構想の推進について
2、医療・介護従事者等の確保・育成について
3、健康寿命日本一の取組の推進について
4、国民健康保険運営の都道府県移管について
5、手話言語条例の推進について
6、予防接種制度の見直しについて
7、がん対策の推進について

項目1 地域医療構想の推進

団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向けて、地域医療構想の策定が始まった。二次医療圏ごとの特色をしっかりと把握し、目標を設定する必要がある。特に必要病床数の確保、在宅医療の推進は急務であり、地域包括ケアシステム確立、医師会・歯科医師会・薬剤師会・看護協会・ケアマネージャーなど多職種の方及び市町村等との連携協力が不可欠である。
県民、市町村、関係団体の意見を聴取し、神奈川モデルを国へ強く示し、十分な地域医療介護総合確保基金の確保に努め、その上で基金を活用した病床の機能分化・連携、在宅医療の充実、人材の育成確保を要望する。

項目2 医療・介護従事者等の確保・育成

2025年問題に向けて、慢性疾患や複数の病気を併せ持つ要介護者や認知症患者が増加することが予想され、住み慣れた地域で安心して療養できる医療体制づくりが必要となる。在宅医療・在宅介護の一連のサービスを県民誰もが等しく受けられるように、担い手となる医療・介護従事者等の確保や質の高いサービスを提供できるような人材の育成を図るよう要望する。
また、本県では、医師・介護従事者不足の状況の中、住民は不安を感じていることも少なくない。長期的視点にたった人材確保を要望する。

項目3 健康寿命日本一の取組の推進

健康寿命日本一を目指し、未病を治す取組を進めている。その中で未病を治す取組の強化を目指し、未病センターの設立、CHO構想の推進など官民一体の健康づくりを推進してきた。
引き続き、県民一人ひとりの健康への意識の向上、継続した実践を促し、県民運動(健民運動)として広がるように、未病サポーターの活動を促進するなど関係機関と協力して取組を推進することを要望する。

項目4 国民健康保険運営の都道府県移管

医療保険改革法を受け、国民健康保険の運営主体が平成30年度に市町村から都道府県へ移管される。保険料収入が少ない一方で医療費が高く、慢性的な赤字体質にある国保制度を将来にわたり持続可能なものとするには、構造的な問題解決が必要不可欠である。
被保険者の実態を十分に踏まえ、ITで管理している医療データを活用し医療費の抑制をめざす取組を行うとともに、全国知事会と連携を図り、国に対し、財源の安定と制度の充実を求めていくよう要望する。

項目5 手話言語条例の推進

障害のある人もない人も共に安心して暮らせる社会を目指すため、来年4月1日に障害者差別解消法が施行される。
本県おいては、既に平成26年12月、議員提案により「手話言語条例」を制定し、ろう者とろう者以外の者が相互の人格と個性を尊重し合いながら共生できるよう、神奈川県手話言語普及推進協議会・手話言語推進会議を設置し、当事者をはじめ広く県民の意見を聴取し、来年3月の手話推進計画の策定に向けて取り組んでいる。今後も市町村や関係団体と連携し、手話に対する県民の理解を更に深め、手話の普及等を推進することを要望する。

項目6 予防接種制度の見直し

本県では、妊娠する人から先天性風しん症候群を出さないことをめざし「風しん撲滅作戦」を行っている。風しんを含む感染症には予防接種が有効だが、副反応を起こす可能性は否定できない。接種にあたっては、副反応等のリスクについて、しっかり把握し情報提供に努めることを要望する。
また、本県においても重い副反応が報告されている子宮頸がん予防ワクチンについては、国では救済に係る審査が実施されたが、県内の医療機関で患者が適切な治療ができるよう患者への情報提供に努めるとともに、医療機関が診察の質の充実を図ることができるよう支援することを要望する。

項目7 がん対策の推進

日本人の2人に1人が罹り、がんが総死亡者の3人に1人という死因の第1位を占める現状の中で「がんにならない・負けない・いのち輝く神奈川づくり」推進を今後も進める必要がある。県立がんセンターでも重粒子線治療が始まるが、国が検討する重粒子線治療にかかる先進医療の見直しが、患者の不安や混乱を招く仕組みとならないよう国に働きかけるよう要望する。また、本県独自の県民の立場に寄り添った負担軽減策を要望する。
また、がんは早期発見・早期治療で治癒率が高まる。がんの早期発見をめざし、県民一人ひとりががん検診を積極的に受診すべく、実施主体である市町村や医療保険者と連携し、検診の受け易い環境を整備するよう要望する。

7. 経済のエンジンを回し、県内経済の活性化を

(産業労働局)

1、かながわスマートエネルギー計画の推進について
2、オリンピック等を見据えた観光促進による地域経済の活性化について
3、中小企業、小規模企業に対する支援について
4、若者、女性の活躍を促進する環境づくりについて
5、障害者の雇用促進について
6、さがみロボット産業特区について
7、箱根の産業を支える取組について

項目1 かながわスマートエネルギー計画の推進

かながわスマートエネルギー計画を展開する中、特に再生可能エネルギーの導入加速化と分散型エネルギーシステムの構築に取り組んでいる。しかしながら、各事業ともコスト高や事業者の採算性などの問題を抱え、普及拡大には相当の時間が必要である。確かに、将来のエネルギー事情を考えるとき「エネルギーの地産地消」と「分散型電源への転換」は重要課題と考える。
県は、国に対して各事業の支援の継続を求めていくとともに、県民の理解を十分に得られるようなプロジェクトを推進して行くことを要望する。

項目2 オリンピック等を見据えた観光促進による地域経済の活性化

2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を追い風に、インバウンドを中心とした観光客の一層の増加を図る大きなチャンスであり、そのために外国人向け海外プロモーションの強化やSNSなどによるリアルタイムでの情報提供体制の構築が不可欠である。また、横浜、鎌倉、箱根に続く、魅力的な観光資源を発掘し、磨き上げ、広くプロモーションしていく絶好の契機でもある。その際には、外国人観光客に向けて、街中のサインマップや飲食店のメニュー等を多言語化するなど受け入れ態勢の整備も必要である。
市町村としっかりと連携し、内外の観光客誘致を促進して「観光立県かながわ」の実現を目指すことを要望する。

項目3 中小企業、小規模企業に対する支援

中小企業・小規模企業は、ものづくりやサービスの提供、雇用面など地域経済の発展に不可欠だが、大企業と比べ人材や資金面で十分ではなく、取り巻く環境は厳しい状態が続いている。
今回、神奈川県中小企業活性化推進条例を改正し、同計画を改定するにあたり、中小企業・小規模企業側のニーズを反映するよう求める。特に、特区を活用した小規模企業の新規参入やベンチャーなどの仕事創出、事業継承への支援、海外への進出など、あらゆる面からサポートを充実・強化する必要がある。
今後、中小企業・小規模企業の活性化を推進し「経済のエンジン」を回していくために、地域の支援機関の機能強化を図り、商工会・商工会議所との連携を深め、きめ細かい支援策の強化・推進を要望する。

項目4 若者、女性の活躍を促進する環境づくり

活気あふれる神奈川を実現するには、次世代の労働力を担う若年者の人材育成と就労支援が重要である。若年者の職業的自立の支援、職業能力の開発を推進するとともに、かながわ若者就労支援センターにおける個人面談や就職面接会などの開催を強化して、より積極的な就業支援の促進を要望する。
また企業や組織内において、潜在能力の高い女性が活躍できる環境整備も重要である。現状は女性管理職の割合は伸び悩み、育児中の女性の有業率も低い。働く女性が生き生きと活躍できる環境の整備を要望する。

項目5 障害者の雇用促進

障害者の自立及び社会参加の促進は重要な課題である。中でも就労支援は、障害者の生活を支える上で欠かせない取組であり、民間企業の立場からも、企業のイメージアップにつながり、地域活性化の一端を担うものといえる。
しかし、本県企業における障害者雇用率は、法定雇用率2.0%という目標数値に達している企業は少ない。
県として、まずは県が発注する業務において障害者の雇用率アップにつながるような取組を進めることを要望する。その上で、既存事業の充実を図るとともに、常に高い雇用率をキープしている企業のノウハウを調査・研究し、民間企業の理解が深まるような取組を進めることを要望する。

項目6 さがみロボット産業特区

特区の指定から1年半が経過し、公募型の実証実験支援事業には全国から複数の応募があり、ロボットの実用化では既に4件が商品化されるなど着実に成果を挙げている。
今後は、国と協議中の「近未来技術実証特区」における規制緩和の活用、企業が国へ申請する研究開発補助金の獲得支援、火山活動対応ロボット開発の促進、超高齢社会を見据えた医療・介護分野のロボットの開発支援などインセンティブを活用した企業誘致を進めることが重要である。
本特区の実績、有効性、将来性などを国内外へ向けて効果的にPRするなど情報発信に力を入れ、積極的に取組むことを要望する。

項目7 箱根の産業を支える取組

箱根大涌谷周辺の火山活動は、一時期、噴火警戒レベルが3に引き上げられ、観光産業は甚大な被害を受けた。県では、知事を先頭に「箱根を守り抜こう宣言」を発表し、関連事業者に対する支援策を実施するとともに、観光施策においても観光客誘致に努めたところである。
しかしながら、噴火警戒レベルが引下げられた現在も箱根町の宿泊業(人数・対前年同時期比)は7割弱と低迷している。本県の観光の柱である箱根を守るために事業者支援策の継続と観光施策の一層の充実を強く要望する。

8. 災害に強い活力ある県土づくりを目指して

(県土整備局)

1、災害に強い県土づくりについて
2、入札制度の改正と見直しについて
3、国・県道の早期事業化と整備促進について
4、スマートインターチェンジの整備促進について
5、リニア中央新幹線の建設促進と県央・湘南都市圏の整備推進について
6、地籍調査の促進について
7、空き家対策の推進について
8、県立都市公園整備の推進について

項目1 災害に強い県土づくり

インフラ整備のための資材等の高騰が著しく、前年と同額程度の予算では整備の遅延が懸念される。災害に強い県土づくりを行うために予算の確保は不可欠である。
近年、過去最大を上回る豪雨の影響から大規模自然災害が全国各地で発生し、多くの人命が失われている。本県においても、大規模な被害が、いつ起きてもおかしくない状況にある。
河川氾濫や浸水被害による被害を防ぐために、危険個所の整備を進め、護岸や遊水池整備などの対策を着実に進めるよう要望する。
また土砂災害による被害を最小限にするため、土砂災害警戒区域等の指定の推進や土砂災害対策を強化するよう要望する。

項目2 入札制度の改正と見直し

地域の建設業者が安定的な経営を行うために、公平かつ安定的な受注環境を整えていく必要がある。
そこで、公共工事の品質確保と、建設業者の健全な発展のため、昨年6月に改正された品確法を遵守することはもとより、事業者からの意見も真摯に受け止め、予定価格設定時における端数処理の廃止、及び落札者決定におけるくじ引きの公平性の確保など、入札契約制度のさらなる改善と、より適切な運用に、絶えず努めるよう、強く要望する。

項目3 国・県道の早期事業化と整備促進

高速道路網の整備は、ストック効果を発揮するなど経済に好循環をもたらす重要な取組である。
しかしながら、新東名高速道路や厚木秦野道路など“つながるべき道路”がつながっていないため、道路ネットワーク全体としての機能が十分に発揮されていない。引き続き、高速横浜環状南線の整備促進を国に働きかけるとともに、三浦縦貫道路や西湘バイパスの延伸の早期事業化など幹線道路ネットワークの早期整備を要望する。

項目4 スマートインターチェンジの整備促進

スマートインターチェンジの設置は交通の円滑化や災害時の緊急輸送路としての役割など多方面にわたる効果が期待され、早期の開設が望まれる。
東名高速道路の綾瀬、新東名高速道路の山北、秦野、圏央道の厚木PA、横浜横須賀道路の横須賀PAの整備促進を強く要望する。

項目5 リニア中央新幹線の建設促進と県央・湘南都市圏の整備推進

2027年の開業に向けてリニア中央新幹線事業が実施されているが、県としても地域の意向を踏まえ、周辺のまちづくりや交通体系のアクセス向上に取り組む必要がある。
また、東海道新幹線新駅とリニア中央新幹線神奈川県駅を結ぶ交通の軸として、JR相模線の複線化や道路の整備など交通ネットワークを形成することが重要である。
さらに質の高い生活や新たな産業を創造するネットワーク型都市圏である県央・湘南都市圏の整備に向け、積極的に事業推進を図ることを要望する。

項目6 地籍調査の促進

近年、豪雨や地震など大規模な自然災害が頻発しているが、もし万一、災害が発生した場合には、迅速な復旧・復興が求められる。
この復旧・復興活動を効率よく行うには、土地の権利関係や境界を明確にしておく必要があり、地籍調査事業によって土地の境界は容易に復元できる。 しかし、本県における事業の進捗率は全国平均を大きく下回る。まずは官地と民地の境界確定を先行させるため、国、県、市町村が連携し事業を促進することを要望する。

項目7 空き家対策の推進

空家対策法が完全施行されたが、2013年の空き家の割合は過去最高の13.5%となり、今後、急上昇すると予想され、2033年には空き家率が28.5%に達するとの試算もある。
放置された空き家は、治安や防災面からも大きな問題である。本年9月に豪雨被害のあった茨城県常総市では、空き家が復興の大きな障害となっている。
市町村が計画策定する空き家対策を支援するとともに、空き家の利活用についての普及啓発を含め空き家対策を一層推進するよう要望する。

項目8 県立都市公園整備の推進
都市公園は、緑地の保全など良好な環境や景観の形成に寄与することはもとより、レクリエーション、健康運動など幅広い県民の憩いの場であり、さらに災害時の避難場所として県民の安全を守る場でもある。
県立都市公園の重要性は高く、多くの県民が利用できるように促進に取り組むよう求める。また、厳しい財政状況の中にあっても、維持管理における工夫など様々な知恵を出し、整備を推進するよう強く要望する。

9. 将来を担う子供たちのための教育を

(教 育 局)

1、県立高校改革の推進について
2、国際バカロレア認定校の設置について
3、インクルーシブ教育の推進について
4、不登校、いじめ・暴力行為等への対応について
5、スポーツの振興について
6、伝統芸能・文化財の継承について

項目1 県立高校改革の推進

近年の社会・経済のグローバル化・情報化の進展、また少子化・人口減少の中、県立高校改革実施計画(全体)・素案が示された。県立高校改革を進めるにあたっては、より質の高い高校教育を提供できるよう、グローバル人材の育成や学び直しのできるクリエイティブスクールの増設など、幅広い目標に向けて、県民の信頼と期待に的確に応えることが求められる。
県立高校の再編・統合にあたっては、全日制進学率の向上をめざし、今後の生徒数の動向を十分に見極めながら、それに対応した生徒定員数と学級数を確保するとともに、活力ある教育活動ができるように学校規模の適正化を図ることが必要である。
県民意見を十分に尊重した上で、本県教育の将来を見据えた高校改革を実施し、県立高校の再編・統合を進めていくことを要望する。
また教育環境の整備の取組も重要な課題であり、校舎の耐震化・老朽化対策とともに、トイレ環境等の整備を進めるよう要望する。

項目2 国際バカロレア認定校の設置

近年のグローバル化に対応するため、高い語学力を駆使して、国際的な競争を乗り越え、日本の伝統や文化に立脚し、高い志を持つ自立した人間として、他者と協働しながら未来を創る人材の育成が求められている。
そのため県立高校改革では、国際的な大学入学資格が取得可能な国際バカロレア認定校1校の設置を計画していることから、教育にあたる教職員の海外派遣研修や認定にかかる経費、施設設備の整備など、認定に向けた取組を推進するとともに、認定後も教育活動の維持・発展を図る取組を進めるよう要望する。

項目3 インクルーシブ教育の推進

本県では、支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、障害のあるなしにかかわらず、すべての子供が同じ場で共に学び共に育つことを目指した、インクルーシブ教育を推進している。その取組は将来の社会を担う子供たちが、相互理解を通じ、互いに人格と個性を尊重し支え合うことの大切さを学ぶ観点からも重要である。
そのため、インクルーシブ教育の推進に向けては、教職員研修の充実や県民の理解啓発を促進するとともに、小中学校の「みんなの教室」モデル事業や、高校における実践推進校の取組により、小中学校から高校まで連続した学びの場で取り組むよう要望する。

項目4 不登校、いじめ・暴力行為等への対応

「平成26年度神奈川県児童・生徒の問題行動等調査」の結果では、暴力行為の発生件数は全国で2番目、不登校児童生徒数は3番目など、依然高い状態が続いている。
近年の急速な情報化の進展など児童・生徒を取り巻く環境は大きく変わり、問題行動等の解決にあたっては、専門家の知見の活用や関係機関との連携強化が重要である。課題を抱える児童・生徒の多様な支援のニーズに対応するため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの充実を図るよう要望する。

項目5 スポーツの振興

2020年東京オリンピックのセーリング競技及びラグビーワールドカップ2019決勝の本県開催が決定し、県民のスポーツへの関心が一層高まっている。こうした機運をしっかりと捉えスポーツ振興を図るとともに、一過性のものとすることなく、オリンピック後も着実に推進していくことを広く県民に示すために、スポーツ振興条例を早期に制定するよう要望する。
また「平成26年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」によると、本県の子供たちの体力は、男女とも全国的に最下位層である。子供たちだけでなく、すべての県民が健康づくりのためにも、常日頃よりスポーツを楽しむことのできる環境づくりが必要である。
そのような視点からも、県立体育センターをすべての県民のスポーツ振興拠点に相応しい施設として早期に再整備し、さらに県内のスポーツ施設についても必要な整備を着実に進めるよう要望する。

項目6 伝統芸能・文化財の継承

県内の民俗芸能の保護団体においては、財政的に厳しい中、後世に引き継ぐため努力しているが、少子高齢化により指導者、後継者が不足し、その成果を発表する場は減少してきている。そこで、県には、後継者育成の観点から、人材育成に取り組むとともに、伝統芸能の成果を発表する場を確保するよう施策の充実を要望する。
今年は、県内の文化財が国指定史跡や重要文化財に新たに指定され、史跡等の整備・活用が図られていくと思うが、一方、保存修理が必要な文化財も多い。引き続き、補助金など必要な予算を確保し、文化財の保存・活用を図るよう要望する。